浜松医科大学内科学第二講座 人を知る 専攻医が語る第二内科の魅力
内科学第二講座 新人専攻医座談会

専攻医が語る第二内科の魅力

井田先生肝臓内科
浜松医科大学2017年卒

湖西市出身。医師である父親が働く姿を見ていたことが、この道を志すきっかけになった。趣味は、高校時代から続けているサッカーやバレー。運動不足解消のために、今でも機会を見つけては汗を流す。

村野先生呼吸器内科
浜松医科大学2017年卒

長泉町出身。地元高校から浜松医大へ。幼少期に喘息で入退院を繰り返した経験があり、同じように苦しんでいる人の力になりたくて医師を目指した。オフタイムは、劇団四季のミュージカルに夢中。

今井先生内分泌代謝内科
浜松医科大学2017年卒

磐田市出身。人はなぜ病気になるのか。根源的な疑問を解きたくて研究者への道も考えたが、研修医時代の経験から内科医への道に。休日は買い物に費やすことが多く、今は本屋さん巡りがマイブーム。
特定の診療領域に対して適切な教育と受け、十分な診療技能を身につけて患者さんの信頼に応える「専門医」。その専門医を目指す研修中の医師を、専攻医と呼ぶ。初期研修を終え、今年の春からそれぞれの専門領域を選んで歩み始めた3人の専攻医に、専門医を目指したきっかけや、第二内科を選んだ理由を聞いた。

専門領域を選んだ理由

“ 内科でありながら手技的な側面が多いところに惹かれた ” ― 井田

“ 糖尿病は身近な病気。困っている人はたくさんいる ” ― 今井

“ 幅広い疾患が診られる呼吸器内科は、きっとやりがいも大きい ” ― 村野

浜松医科大学の同級生である皆さんは、今年から内科学第二講座の肝臓内科、呼吸器内科、内分泌代謝内科に所属して、専門医への道を歩み始めました。まず、皆さんはどうしてその専門分野を選んだのですか?
井田
父が消化器外科医だったこともありますが、実は僕自身胃潰瘍をやった経験があって、その経験が生かせるんじゃないかと考えて、まずは消化器系に興味を持ったんです。その中でも肝胆膵領域、肝臓内科に注目したのは、内科の中でも手技的な側面が多くて、内科的でありながら内視鏡を使った処置で患者さんを助けることができるからです。そこに大きな魅力を感じましたね。
村野
私が呼吸器内科の専門医を目指す決め手になったのは、幅広い疾患が見られることです。感染症やがん、膠原病やアレルギーなどさまざまな病気の治療に当たれるので、やりがいも大きいと感じました。あとは研修中に出会った先生方が皆さんとても熱意があり、その人柄に惹かれた部分も大きいかな。
今井
私は、実は学生時代からずっと小児科医がいいなって思っていて。研修中も最初は内科医になるつもりは全然なかったんですよ(笑)。
井田
そうだったの?
今井
でも、研修医時代に救急当直をしていて、そこで出会った内科の上級医の先生の仕事ぶりを見ていて気持ちが変わりました。内科医は最初に患者さんに対応することが多いですが、診察して、病気を鑑別して、検査をして治療方針を決めて、とテキパキ対応している姿に「カッコいいな」って憧れを持ち、内科医になろうと決めました。糖尿病・内分泌科を選んだのは、糖尿病は身近な病気で、困っている人がたくさんいるということと、いろんな薬の組み合わせやタイミングによって効果に大きな違いが出るので、いろいろ考えながらその患者さんに最適な治療を考えていく、というスタイルが自分に合っているんじゃないかなって。あと、浜松医大では糖尿病内科と内分泌科が一緒になっているので、ホルモンが関わるような珍しい病気も勉強できるのも魅力でした。
今井先生は当初は小児科に興味があったというお話でしたが、井田先生や村野先生も専門を選ぶ際には悩みがありましたか?
井田
僕は外科系と悩んだ時期がありましたね。内科と外科の大きな違いは手術の有無ですが、冒頭で述べたように初期研修で実際の業務に触れてみて、内視鏡を使った処置や検査ができる消化器内科に、より強く惹かれました。
村野
呼吸器内科は緊急性が高い疾患が多いので、呼び出しも比較的多いんです。だから体力面や知識面で続けていけるのか、それが最大の悩みでした。でも、学問的には呼吸器科が一番魅力的だったので、思い切って志望しました。
今井
私は先ほど話した小児科の他に皮膚科にも興味があって、内科とその2科ですごく悩みました。実は内科は専門医制度に少しわかりにくいところがあって、一人前になるまで時間がかかるという先入観を持っていたんです。だから同級生の仲間の間でも、早く一人前になりたいからって、他の科を選んだ人も少なくなかった。だから、私みたいに要領の良くないタイプが内科なんて選んじゃっても大丈夫だろうかって不安に思っていたんです。
村野
ローテーションの時期が長いこともあって、当時の研修医の間では「内科は時間がかかる」っていう先入観があったんですよね。だから特に女子は、そこに不安を持った人は多かったかもしれません。女性はキャリアの重要な時期に出産や子育てというライフイベントが生じる可能性があるから、あまり時間をかけたくないって思う。
今井
内科は診る範囲が広いから、ローテーションに時間がかかるのは仕方ないんですよね。でも、他科に行った友人から「こないだ○○を経験したよ」なんて話を聞くと、私はまだローテーションの途中なのにって、ちょっと焦りを感じることはあるけど(笑)。
村野
ただその点では、呼吸器内科は医局員の先輩が多く女性医師もたくさんいるので、大いに勇気づけていただきました。

入局のきっかけと第二内科の魅力

“ 大学医局のプログラムが一番充実している ” ― 今井

“ 医局の雰囲気が、専門分野を選ぶ決め手に ” ― 村野

“ どこにいても大学とつながっていられる ” ― 井田

皆さんは初期研修終了後に第二内科に入局しましたが、どうして医局に所属しようと考えたのでしょうか。
今井
最近は大学の医局に入らないという選択肢もあって、実際にそういう道を選んだ同級生もいます。でも、私自身について言うと、入局しないという選択肢はありませんでした。自分ひとりで医師として生きていく自信なんてなかったし、専門医を目指すのであれば、どの科を選ぶにしても大学医局のプログラムが一番充実していると感じていたから。入局するなら浜松医大が良かったので、だからどの科を選ぶかはすごく悩んだけれど、入局するかどうか、どの大学にするかはほとんど悩まなかったんです。
村野
私も同じですね。どの科を選ぶことになっても入局はしようと思っていました。組織の安心感というものはやはりあって、同期もできるし、目標を同じくするいろんな方々と意見交換もできます。だから私にとっても専門分野を選ぶことと、どの医局に入るかは同義でした。ただ、だからこそ専攻を選ぶ際には、医局の雰囲気も参考にしました。
井田
僕も入局そのものは迷いませんでしたね。肝臓内科に決めたきっかけが、初期研修でお世話になった先生の魅力だった、という側面もありましたから。もちろん他の科でもいろんな先生に良くしてもらいましたが、第二内科の先生は特に印象深かったんです。こちらのすごく初歩的な質問にも丁寧に答えてくれるし、全体に温かい雰囲気がある。個々の先生を見ても、研究に専念している方もいれば臨床に力を入れている方もいて、きっとここなら多くを学べるという確信がありました。
村野
そういえば、私が入局を迷っている時、ちょうど呼吸器内科が主催する『気管支鏡セミナー』というイベントがあったんです。主な対象は研修医と若手の呼吸器内科医なのですが、医局員の先生もたくさん参加していて、専門的な話を熱心に聞かせてもらったり、休み時間にはたわいもない話で笑わせてもらったり。とても楽しく充実した時間で、その時感じた雰囲気が自分に合っているな、って感じたことが入局の決め手になりました。
井田
仕事の話だけじゃないところが重要なんだね。
村野
うん。今ちょうどローテーションで、いろんな医局に触れる機会があるけれど、カンファレンスひとつ取っても考え方や雰囲気が違うのを感じるし、漠然とはしているけれど、そういった空気感が自分に合うか合わないかは大切だと思う。
医局員になって、ここが良かったと感じることはありますか?
村野
まだローテーション中なので、実は第二内科はまだ経験していないんですよ(笑)。
今井
私も! でも、内分泌内科の先生がずっと気にかけてくれていて、珍しい症例があるとか、こういう勉強会があるとか教えてくれたりしています。今は違う病棟にいますから、そういう心遣いをしていただけることはうれしいですね。
村野
呼吸器内科でいえば、医局員の人数が多いので、留学していたり、研究に力を入れていたり、いろんな道を歩んでいる先輩がいます。自分の人生設計を考える上でも、幅広い未来が見えるというのはあります。
井田
医局に籍を置くということは、どこで働いていても大学病院とつながっていられる、という点が大きいですよね。僕はたぶん来年市中病院勤務になると思いますが、市中病院と大学病院では診られる疾患の内容も数も違うし、手技は経験が大切だから、数をこなせるということもとても重要になります。ひとつの施設だけでは経験できないことや情報を、常に吸収し続けられる環境がある。
村野
市中の病院でも研修プログラムはあるので、専門医を目指すことはできます。でも経験の質や量は大きく違ってくると思います。もちろんその病院でずっと働きたい、家族の都合などで医局の人事で動きにくいという人もいるとは思いますが、私はある程度いろんな病院を回ることはプラスだと思っているんです。
今井
ずっと1カ所にいると、それがどんなに優れた施設でもマンネリ化してしまうような気がします。長くいるというだけで、自分がそこの重鎮のようになってしまうのも困るし(笑)。ただ、女性としては、将来結婚して旦那さんの勤務地と離れたらどうなるのかとか、子どもができたら遠くの病院には勤務できないとか考えてしまう気持ちも理解できるんですよね。
村野
確かにそうだよね。でも、今はまだ先の話だと思っているから、若手のうちはいろんな病院に行きたいな。研修医の時も異動してきた先生がとても新鮮な考えを持っていて、すごく勉強になった。薬の使い方、ドレーンの使い方、いろんな刺激があった。だから個人的には、医局人事はマイナスだと思っていないんです。
井田
ただ今の社会事情から考えると、男性も含めて女性医師がもっと活躍できる環境づくりを考えていかなければいけないよね。第二内科の先輩でも女医さんはたくさんいるし、奥さんと交代で送り迎えしているイクメンの先生もいる。僕たちはまだ実感がないけれど、きっと女性医師ももっと活躍できるようになっていくと思うよ。

これから専門医を目指す方への
メッセージ

皆さんはこれから浜松医科大学第二内科の専攻医として大いに学び、専門医への道を力強く歩んでいくことと思います。その第一歩を踏み出した先輩として、これから専門医を目指す、あるいは入局を考えている未来の後輩に、一言ずつメッセージをお願いします。
井田
肝臓内科に入り、この病院で働いていて思うのは、臨床、研究どちらに目を向けても、それぞれのエキスパートがいることです。処方の選び方にしても手技にしても、基礎から教えてくれる方もいれば経験的に教えてくれる方もいて、その両方の視点や考え方を学べることは、専門医を目指す上で大きな糧になるはずです。これから専門医を目指す方には、専門領域の面白さだけでなく、学ぶ環境にも注目してほしいですね。
今井
日本社会は、これからもっと少子高齢化が進んで、内科医の需要はますます高くなっていきます。生活習慣病を多く扱う内分泌代謝内科も同様ですが、特に糖尿病に関しては、今も多くの研究がなされており、日進月歩で新しい薬や治療法が生まれている、大変刺激に満ちた分野です。臨床医として活躍したい方も研究を目指す方もきっと大きなやりがいを得られると思いますので、ぜひ第二内科と内分泌代謝内科をよろしくお願いします(笑)。
村野
医局に所属することで、いろんな先生との出会い、人脈ができます。そして呼吸器内科の中でもさらに専門性が分かれており、それが自分をさらに成長させてくれます。呼吸器内科は疾患の幅も広くて、感染症やアレルギーなどさまざまな病気を診られる上、手技もあるので医師としてできることも多く、内科的な治療と外科的な治療のバランスがいい科です。そこに魅力を感じてもらえたらうれしいですね。
取材:2019年6月